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日本語文法 研究ノート『本当の意味』


第一章 補い合う二種類の語

 私たちが使っている単語は、大きく二種類に分けることができるといわれる。次の文を例にすれば、太字部分と、傍線部分とに分けられる。

 「手旗信号会話できたら楽しいかもね?」

 太字部分は、「名詞」や「語幹」と呼ばれる部分で、傍線部分は、「助詞」や「語尾」などと呼ばれる部分だ。
 太字部分と傍線部分とには、はっきりと、相反する特徴がある。その特徴を考えられる限り並べてみよう。

 太字部分:「手旗信号」「会話」「でき」「楽し」

 ・これを並べただけでも話の内容が大体わかる。
 ・伝えられる意味が説明しやすく、英語などの外国語に翻訳もしやすい。
 ・頭の中に知識として蓄積されていると感じられる。
 ・記憶力に余裕があればいくらでも増やすことができる。
 ・新たにおぼえて増やせる反面、忘れてしまう語もある。
 ・たくさん使える人(語彙が豊富な人)と、そうでもない人との差が大きい。

 傍線部分:「で」「たら」「い」「かも」「ね」

 ・これだけでは話の内容がわからない。ただ、ほかが聞き取れず、この部分だけ何とか聞き取れた場合、
 「ほにゃらららほにゃらたら、ほにゃらいかもね?」
 と聞き取れた場合には、「ほにゃ…」の意味がわからなくても、なんとなく気持ちが伝わった気になる。
 ・伝えられる意味が説明しにくく、英語などの外国語にも翻訳しにくい。(それだけでは翻訳できない単語が多い。)
 ・頭の中に知識として蓄積されているとは感じられない。
 ・単語の数が少なく、誰にも通常は全てひと通りが習得されているので、新たに増やすこともないし、忘れることもない。
 ・ほとんどの人がほとんど全ての単語を使えるため、個人差はほとんどない。

 このように特徴が相反するということは、どういうことだろう?
 先に見たように、太字部分が聞き取れず、傍線部分だけ聞き取れた場合に何となく気持ちが伝わるということは、太字部分が《事柄を端的に伝える》が、それだけではどうしても何か言い足りないから、それを《補う》のが傍線部分だと見ることもできる。
 いずれにしても、太字部分ははっきりした事柄を伝え、傍線部分はそれを伝えていないのだから、傍線部分が事柄ではなく《別のもの》を伝えていることは間違いないだろう。

 《事柄ではない別のもの》だけを話しても実質的な話の内容は伝わらない。「ほにゃら…だね」というだけでは何の事柄について話しているかわからないからだ。
 それに対して、事柄を表す上で最も手っ取り早い単語を並べただけでも、私たちの言葉としては大いに物足りないところとなる。
 そういったことから、太字部分と傍線部分とは、一方だけでは足りないものを《互いに補い合っている》とも見られる。

 《事柄を伝える》部分とは「名詞」や「語幹」と呼ばれるものだ。
 そして《事柄ではない別のものを伝える》部分とは、「助詞」や「語尾」などと呼ばれるものだ。
 このように、単語が大きく二種類あることについてみたが、話を進めやすくするために、カタカナで次のように呼ぶことにしよう。

 事柄を伝える部分→ ヨビカタ(「名詞」や「語幹」など、事柄の呼び方のこと)
 事柄ではない別のものを伝える部分→ ゴビ(「助詞」や「語尾」など、事柄の呼び方ではない部分のこと)